

地震発生時の、ゴーッとお腹の底から響く音と、部屋の大きな揺れを体感できるシステム「エベレスト」。そんな、地震の恐怖を体験できるグッズ(総称:ぶるるシリーズ)も開発されている、日本の耐震分野の第一人者名古屋大学大学院教授 福和伸夫さんに、2度目のご登場をお願いしました。今回は、日本を地震から守るために、私たちが今できることは何かを伺いました。
昔の人々は、自然の怖さをよく知っていて、防災行動を自分たちが実践していました。
例えば、良い地盤の丘の上に住み、家は平屋で、屋根は板葺で軽いから、揺れにくいし壊れにくい。移動手段は徒歩だったし、電気もガスも水道も使っていなかったので地震の後もすぐに日常生活に戻れます。生きる力をみんなが持っていた時代がありました。
現代は、都市に人口が集中したことで、都市が軟弱な地盤に広がり、建物が高層化・密集化したため、地震が起こると強い揺れに見舞われることがわかっています。
現代に生きる私たちは自然の怖さを感じなくなってしまったから、生きる力も弱まっているんです。その感覚をなんとか変えたい。そう思って僕たちは、巨大地震に備えることの大切さを伝えるために、誰にでもわかるオモチャ、振動実験教材「ぶるる(運ぶ・回る・揺れる)」シリーズを開発し続けています。


※[ 元祖エベレスト ] ウェブ上で我が家の揺れを体感できるバーチャル地震応答体感システム。ガラスの周りに物を置いていたら、実際の地震の際は危険だと実感できます。家具等は固定し、窓は防災ガラスで安全対策を。
メガネをかけると部屋が揺れているように感じます。地震の音と揺れが一致して臨場感たっぷり




地震の被害を少なくするには、地盤の良い所に住むことが大切です。地盤が悪いのは、昔は川や海、池があった場所を埋め立てている土地です。
地名を見ると一目瞭然で、「窪・久保・谷・橋・水・原・田・浜・川・津・瀬」などがつく場所は地盤が軟らかい場所が多いです。東京は特に、こういった地盤の弱い場所に大事なビルが乱立しているので、とても心配な場所なんです。法律は最低基準だから、軟弱な地盤に建物を建てる人は損します。軟弱地盤としっかりとした地盤では、揺れはずいぶん違いますし、1階の揺れと高層階でも揺れ方が全く違うんです。
そんなことを全然気にせずに高層ビルに住んでいる人は要注意です。
僕たち大人は、次の世代に迷惑をかけないようにしなければいけません。
具体的には、今ある建物の耐震化を進めること、そして、もう1つは、住む場所として安全な土地を選ぶことです。
例えば都会の軟弱地盤上の住宅密集地に住んでいる人だって、今自分が引っ越せなくても、子供が大学・勤務先・新居を選ぶ際には、地盤の堅い場所に住むようにすすめ、彼らの世代の時代には安全安心な地域に住むようにすることもできます。
地盤を生かした町づくりを考え直すことも大切です。低平地は農地に戻し、安全な地盤に建物を置いてコンパクトシティにすることを、日本全体で進める必要があります。
また、日本の既存の建物は、総額20兆円程度で耐震化できると思われます。500兆円ある国内総生産のうちの、たった4%なんです。もちろん、20兆円ものお金を子供たちに借金させるわけではありません。税金を使うのではなく自分でやるべきなんです。20兆円での耐震化を10年で実現するのであれば、一人当たり一年当たり1万6,000円。365日で割ると、一人当たり50円弱。やろうと思えばやれるはずです。次の世代にこの豊かな社会を引き継ぐために、われわれ現役世代は社会を安全にするために全力を尽くさないといけないと思います。
福和先生は、地元名古屋を中心に、様々な社会活動のリーダー的存在です。
東京では、地震に対する興味が薄いようです。その証拠にメディアでの防災の記事数を調べてみると名古屋と比べてあまり多く取り上げられていません。この理由としては、地方から出てきてた人が多いこと、遠距離通勤している人が多く、東京を自分の町とは考えていない人が多いことなどが考えられます。
自分の町を守るためには、地域に愛着をもった 知恵のある人を、育てることも大事です。
それに、今度の地震は、人口減少、少子高齢化、核家族化が進んでいる社会の中で起きます。自分たちの地域は自分たちで助け合って守ること。市民参画の新しい公共って、そういうことなんじゃないでしょうか。
今、地球環境問題が騒がれていますが、今度東海地震や南海地震が起きると、1回の地震で2年分のゴミが出ると予測されています。壊れるものはみなゴミになるんです。ゴミを出さない、大事な資源を失わない。それこそが、環境問題として大事なことなのではないでしょうか。
建物のエコ化は進んでいますが、耐震化はあまり進んでいません。環境問題と同じように、僕たちは、自分たちの町の耐震化を、自分の問題として認識すること、そして、自分でやらないと恥ずかしい、そういう気持ちをもつようにしていきたいものです。
ガラスパワーキャンペーンの、「エコと地震・台風対策」の普及はいいアイデアだと思います。エコと耐震をやろうとする、きっかけの1つになると思います。
【現職】名古屋大学大学院環境学研究科教授
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